プログラム参加者・TOMODACHIアラムナイに聞いてみました!:岡田悠也氏
今回のインタビューは、2020年度「Building the TOMODACHI Generation: Morgan Stanley Ambassadors Program」の卒業生、岡田悠也氏にお話を伺いました。
本プログラムは、2週間にわたり、リーダーシップ・トレーニング、異文化交流、そして現代の社会問題解決のための起業家手法を学ぶ集中型プログラムです。
岡田氏は、法学分野のキャリアを追求し、2023年4月より厚生労働省に勤務。さらに、米日カウンシルのビジネス・アドバイザリー・ボードのサポートにも携わっており、TOMODACHIと米日カウンシルを支援してくださる多くの政府関係者や企業経営者の方々とのつながりを持ち、密接な関係を続けていくこと目指しています。
Q1:法律の道を志すようになったきっかけについて教えてください
難しい質問ですね、というのも途中で道を改めたので。当初、私は企業弁護士か企業内弁護士になりたいと思っていました。しかし、東京を拠点とする日本の大手法律事務所2社でサマークラーク(法律事務所のインターンシップのこと)に参加したとき、事務所での有意義な仕事を経験する一方、政府や政策の重要性を痛感しました。そこで、官僚の道へ進むことに決めたのです。
Q2: 若い頃からずっと法律の道に進みたいと思っていたのですか?
実は違います。10歳の頃は、外交官になるという夢を抱いていました。しかし、外交官について詳しく知ったとき、私はもっと交渉の現場近い仕事をしたいのだと思いました。外交官になることは、直接交渉に携わる人間として魅力的な仕事でありますが、企業弁護士になることの方が、むしろ私にとって価値のある選択かもしれないと思ったのです。外交官になるということは、政府の公的な仕事に関わることで、交渉に直接参加しようと思えば、10年以上政府で働く必要があります。大学生のときに知り合った先輩や退職した外交官からその話を聞いたとき、私は企業弁護士になろうと考えを新たにしました。
Q3: 2020年度「Building the TOMODACHI Generation: Morgan Stanley Ambassadors Program」に参加してみていかがでしたか?その時の経験について少し教えてください?
プログラムに参加した2020年は、まさにコロナ禍初期の頃でした。プログラムに参加するためにワシントンD.C.を訪問し、アメリカの市民社会(シビル・ソサイエティ)について政府関係者から多くのことを学びました。そこを拠点とするNPOやNGO、市民社会団体で働く人々、市民社会活動や企業の社会的責任に携わっている企業・会社、その他の民間団体についても学びました。
Q4: このプログラムで特に興味を持ったことはありますか?
興味深いトピックスはたくさんありましたが、なかでも特に女性問題に関して興味を持ちました。私の友人のひとりが、性教育のワーキンググループに参加していました。プログラムに参加する前は、その問題についてまったく興味を持っていなかったのですが、いまだに友人やプログラムの講義からの学びを継続しています。そう言ったことからも女性の権利問題の重要性を実感しました。
また、投資家が企業の持続可能性への取り組みを総合的な視点から分析する際の視点となる「環境・社会・ガバナンス投資」の重要性を個人的には学びました。
プログラムに参加する前は、企業は、例えばソーシャルグッド(社会や地球環境を良くしようとする活動・製品・サービス)のような利益を常に追求しているのだと思っていましたが、過去とは違うパラダイムシフトが起きていることを学びました。ESG投資は利点があるだけではなく、市場に存在するあらゆる企業やビジネスにとって必須となりつつあるからです。これが、このプログラムでの私の収穫の一つだと考えています。
Q5: そこでの経験は、自分の興味やキャリアに影響を与えましたか?
そうですね。ESG投資は法律や規制によって管理されているのため、法律の重要性を学びましたし、女性問題についても学びました。例えば、中絶やその他の教育的なことも法律によって管理されていますが、もしそれらに関する法律規制がなければ、社会問題となり事態は悪化するでしょう。しかし、必要な法律や規制さえあれば、状況は良くなります。その学びから、ロースクールへ行く決心がつきましたし、政策立案の重要性も学びました。法律というのは、誰かが上の方で作っているのではなく、官僚がもたらす政策によって作り上げられ、官僚を変えることもできるものです。さらに、政策と法律は相関関係にあることも学びました。法律は政策の道具であり、政策は社会に対する意志を持っています。極端な見方かもしれませんが、政策が「主人」ならば、法律は「家来」なのです。政策がなければ法律もない、でも政策があるということは、何らかの法律や規制があるはずなのです。私はプログラムを通して、政策は社会問題から作られているということ、そして法律と政策の関係について学びました。社会的な問題がなければ、政策も生まれないですし、それに伴った法律も生まれないのです。つまり、社会問題は政策の母体であり、法律の母体でもあるのです。プログラムに参加した当時は、社会問題を監視するための一つの策として法律が最も重要であり、弁護士になることが自分にとって最良の選択だと考えていましたが、プログラムに参加した時の記憶を思い返してみると、社会問題を解決するための政策決定プロセスが最も重要であると思いました。知らず知らずのうちに、話し手や他の学生たちからそのことを学んでいたようで、結果、公的機関のキャリアを目指すという人生になりました。
Q6: ここ数カ月、ビジネス・アドバイザリー・ボードのサポートに参加してみてどのように感じていますか?
ビジネス・アドバイザリー・ボードはTOMODACHIの首脳会議であり、私たちの社会的課題の鍵を握る人々の交流地点でもあります。ビジネス・アドバイザリー・ボード(BAB)で出会った人たちから多くのことを学び、今でも関係性を続けています。2020年に参加したTOMODACHIプログラムにおいても、他の仲間たちと真の友情を育むことができ、今でも連絡を取り合っていますし、都合が合えば食事会を開き、現在の社会政策や自分のキャリア状況について意見交換をしています。
Q7:「Building the TOMODACHI Generation:Morgan Stanley Ambassadors Program」に関する意見交換ですか?
そうです、TOMODACHIアラムナイとして初めてビジネス・アドバイザリー・ボード(BAB)に参加したことをきっかけに、そこへ参加することの大切さを知り、代表の田中氏に「定期的にセッションを手伝わせてください」とお願いしました。TOMODACHIの事務局も許諾をしてくれたので、手伝いへ参加することになり、私にとっては、新しいことや今勉強していることを学ぶための機会となりました。
Q8: ビジネス・アドバイザリー・ボードにおけるあなたの役割は何ですか?
写真撮影や受付担当が私の役割です。BABとはビジネス・アドバイザリー・ボードのことで、TOMODACHIと米日カウンシルのサポーターが集まる会合であり、多くの企業幹部や政府関係者がいらっしゃいます。3、4ヶ月に1度、定期的に開催されており、偉大な方々の基調講演を拝聴できる機会でもあります。例えば前回は、金融庁長官や幹部の方をお迎えし、資産運用会社の役割や、過去から現在、そして未来へのパラダイムシフトについて学ぶ機会となりました。日本は今後、高齢社会となるため、年金受給率が低下し、労働力や働く人が不足していくことが予測され、資産運用の重要性は高まっており、それに伴い資産運用会社も変化してくということなどについて。この業界は、日本の投資スタイルや投資姿勢、人々の投資に対する姿勢を考える良いきっかけになると思われます。
Q9: あなたにとってTOMODACHIとは?
一言で表すことは難しいのですが、それでも一言で表すとすれば「チャンス」でしょう。
Q10: これから法律を学ぼうとしている人たちを含め、次の世代に何かアドバイスはありますか?
とても短い言葉で私のアドバイスを伝えるとしたら「恐れるな、怖がらないで」ということです。人は時として、将来や自分の人生について怯えるものです。あえてリスクを冒して、居心地の悪いゾーンに飛び込むことを選ぶのです。私はまだリスクを取るのが苦手な内向的な人間だと思うので、とても大変なことではありますが、人生はたった一度のチャンス、たった一度しかないのです。だから、追い求めたいことは何でもやった方が良いのです。TOMODACHIのプログラムで最も印象に残っているのは、ソフトバンクグループの経営者の言葉です。彼はワシントンを拠点に、アメリカ国内と日本のビジネス、さらにアメリカ政府との関係性を担う役割を背負っています。彼から伝えられた「一分一秒を大切に」という言葉は、とても短いですが、時間の大切さを実感させられました。時間には限りがあります。誰もが生きられる時間は限られているのです。一人の人間が生きられるのは最大でも100年程度で、ほとんどの人は80年か90年ほどしか生きられません、本当に短いものです。私たちはその限界について考えなければならないし、恐れている暇はないと悟らなければなりません。未来や新しいことに怯えている暇はないのです。多くの人は忙しい生活の中でそれに気づいていませんが、知る必要があると思いますし、さらに付け加えるなら、自分の心に従うことが最も重要だと思います。人にはそれぞれに使命があります。だからこそ、心の声に耳を傾けることが本当に大切なのです。お金だけを追い求め、それをたくさん稼げば、大きな家も建てられるし、好きなこともできるでしょう、人にはそれぞれの考え方がありますから。私にとって人生で最も重要なことは、国、地域、社会、そして未来に貢献することなのです。
このインタビューは2023年9月21日にアイカ・メイ・タラヴェラによって行われました。アイカは現在、TOMODACHIシニア・アラムナイ・リーダーシップ・プログラムのインターンであり、「TOMODACHI MetLife Women’s Leadership Program 2019-2020」のアラムナイです。
このインタビューは、TOMODACHIアラムナイ・リーダーシップ・プログラムのインターンであり、「TOMODACHI Toshizo Watanabe Leadership Program 2022-2023」の修了生でもあるハンナ・フルトンが編集し、TOMODACHIアラムナイ・リーダーシップ・プログラムのインターンの金子文が書き起こしたものです。