TOMODACHI世代:遠藤見倫
宮城県石巻市に住む遠藤見倫さんは石巻専修大学生の生徒です。彼女はTOMODACHIサマー2012 BEYOND Tomorrow米国プログラム~復興とまちづくり~に参加して、2週間に渡り東北復興に活かせる米国における復興の経験を学びました。
石巻市から来た、遠藤見倫です。
3 月11 日。まだ寒さの続く中、私は全てを失いました。
住み慣れた町。幼少から育った家。そして最愛の父。津波は一瞬で全てを奪っていきました。
地震の後、父に電話をかけると、奇跡的に電話がつながりました。父は、これから家に帰るところだと言い、受話器
越しに車のエンジンをかける音が聞こえました。これが父との最後の会話になりました。
高台に避難した私の目の前で、私の家は流されていきました。町中を黒い水がつつみ、町中から助けてという声が聞
こえました。その時、私は何もできませんでした。無力な自分を感じました。
私は一人娘で、ずっとお父さんっ子として育ちました。父の死を受け入れることが出来ず、父の遺体がみつかるまで
の間、毎日、父の携帯に電話をかけました。誰も出ないのはわかっていたけれど、毎回、恐怖の中で電話をかけ、誰
も出ないことを確かめて電話を置いては泣きました。
復興、復興、といわれても、私の心は立ち止まったままでした。強くなりたくて、自分の中で何が強いのかわからず、
でも強くなりたくて、どうすればいいのかわからない日が続きました。
そんな時、私は、BEYOND Tomorrow に出会いました。何が出来るかわからない時、何が出来るかを考える場に出会いま
した。それまでずっと孤独でしたが、BEYOND Tomorrow で一生の仲間と最高の時間を共有し、絆が生まれ、仲間が出来
ました。
震災から1 年が経った日、私は自分に約束しました。「人との想いを共有して、その人の夢を応援できる人になる。私
が絶望的だった時、助けてくれたのは人とのつながりだったからこそ、自分が多くの人と関わり、一人でも役に立て
られるように、様々なことにチャレンジして、また1 年後、成長できた自分に出会う」と。
そしてそれを実現するため、BEYOND Tomorrow 米国サマープログラムに応募しました。トモダチ世代として、国外でも
多くの人と繋がり、想いを共有するために。
アメリカでは、行く先々で、東北についてのプレゼンテーションを英語で行いました。アメリカの方々は、私たちの
発信する一つひとつを丁寧に受け取ってくれました。ずっと言われたのは「ありがとう」でした。来てくれて、話し
てくれて、「ありがとう」。その言葉に、私は発信することの意義を学びました。確かに、時々震災時のことを振り返
ると思い出して悲しくはなります。しかし、体験を語り、共有することで、震災を次の世代に伝える活動をしていか
なくてはいけません。
この夏、アメリカに行ったことで、私には、ジャーナリストになり、人と人を言葉でつなぐ役割を果たしたいと考え
るようになりました。この新しい夢を叶えることで、私は、誇りに思っている父が生きていたという証になりたいと
思います。
過去は今を変えられないけれど、今は未来を輝かしいものにできる可能性を秘めている。
それを体現すべく、トモダチ世代の私たちは、お互いに支えあい、励ましあい、刺激を与えられる存在でありたいと
思います。それが東北、日本、世界の未来を切り開く力になると信じます。