TOMODACHI世代: 井上新菜
井上新菜氏は米国生まれの慶應義塾大学法学部法律学科3年生です。TOMODACHI世代の構築プログラム2016に参加しました。
TOMODACHI イニシアチブでの経験について以下のように話してくれました:
Q: TOMODACHI世代の構築プログラムに参加しようと思ったきっかけは何ですか。
A: 米国で生まれ育ち、日本に戻り様々な経験を経た私にとって、日米の架け橋になりたい、というのが幼少期からの夢でした。特異な経歴を持つことで苦労し、自らのアイデンティティについて悩むこともありましたが、いつかこの経験を活かしたいという気持ちはずっと変わらず持っていました。この切実な想いが、TOMODACHI世代の構築プログラムの応募の一番のきっかけです。同時に、未だに社会のリーダーの過半数が男性である現状を踏まえ、女性として積極的にリーダーシップについても学び、議論したいという気持ちもありました。このプログラムの最終目標である、東日本大震災の被災地の復興について企画・政策立案も、震災時に何もできなかった私にとっては、何か行動を起こすきっかけになるのではないかと思い、参加を決めました。
Q: プログラム期間中どのような経験をしましたか。
A: TOMODACHI世代の構築プログラムの2週間はあっという間で、振り返ってみるとどの瞬間も愛おしく思います。非営利セクターを専門的に研究する教授の講義や非営利団体・民間企業の第一線で活躍する方とのディスカッションを軸に、市民社会における非営利セクターの重要性や災害に対して耐性のある社会づくりについて学びました。米国視点で語られる点が多かったですが、逆に私自身が日本人としての誇りや日本社会の強みなどを、日本の学生と共に見出すことができたのも大きな収穫でした。外国に行くと、その国が自国より優れているのではないかという錯覚に陥りやすいですが、積極的かつ冷静に議論をする優秀な仲間がいたおかげで、しっかりと日本を客観視することができました。
座学以外では、リンカーン記念堂や世界銀行、ホワイトハウスなどを見学し、米国の歴史を間近で感じました。特にリンカーン記念堂に着いた時には、思わず米国の “Pledge of Allegiance”(*) を唱えたくなるような、なんとも言えない興奮と感動に包まれたことを昨日のことのように覚えています。
Q: プログラムを通して学んだことを教えてください。
A: 数多くのことを学び、考えた二週間でしたが、何よりもお互いに高め合い、尊敬し合える日米の仲間に出会えたことが収穫でした。プロジェクトの為に夜な夜な議論を重ね、時に衝突しながらも最後まで切磋琢磨できたことは何にも代え難い財産です。プロジェクト以外にも毎晩集まって夢を語ったり、お互いの専門分野を教え合ったりした時間は私の一生の宝物です。
米国の学生とは、言語と文化の壁はありましたが、お互いが納得するまで諦めずに説明を繰り返しました。やっと文化や国民性などの垣根を越え、わかり合えた時に感じた安堵と達成感は言葉では表せません。特に、私のグループは個性の強い人と控えめな人の両極端なタイプが集まったため、議論が中々進まず、お互いを理解するまでに時間がかかりました。それを見かねたアメリカの学生が、私達を現地で老舗のファストフード店に連れ出してアメリカンジョークで和やかな雰囲気を作ってくれたことで、距離が縮まりプロジェクトも捗りました。日本の学生も、細かい資料作成などそれぞれの強みを活かし、グループに貢献してくれました。結果として、優秀賞は逃がしましたが、苦労を共に乗り越えて得たものは、賞よりも遥かに価値のあるものでした。
Q: 将来の目標や計画は?TOMODACHIプログラムは影響していますか。
A: (TOMODACHIプログラムでの)貴重な学びをどのように還元できるのか、少しずつ見出せたらと日々思っています。将来は、TOMODACHI世代の構築プログラムで学んだ非営利セクターに関する知識を活かして、生まれた環境等により教育を受けられない子供や、経済的自立を計れない女性の為のNPOか社会起業を立ち上げたいと考えています。また、今回出会えた仲間とのつながりをこれからも大事に、TOMODACHI アラムナイの一員として、イベントの企画等、より多くの人に TOMODACHI に参加してもらえるよう行動したいと思います。
最後に一言お願いします:
TOMODACHI世代の構築プログラムをご支援いただいた、TOMODACHI交流基金およびモルガンスタンレーの皆様、そしてプログラム関係者である、米日カウンシル、TOMODACHI イニシアチブ、米国ワシントンセンター、他協賛企業の皆様に感謝を申し上げます。おかげでこのプログラムが成功し、実り多いものとなりました。このような素晴らしいプログラムを企画・実行下さり、本当にありがとうございました。
TOMODACHI世代の構築プログラム 2016のメンバーの皆、素敵な時間を本当にありがとう、そしてこれからもずっとよろしくね!
(*)Pledge of Allegiance:米国国民が公式行事等で暗誦される母国への忠誠の宣いのこと