孫正義(ソフトバンク株式会社 代表取締役社長)
TOMODACHI ソフトバンク リーダーシッププログラム発表の記者会見にて
2012年2月3日
「今回アメリカ大使からTOMODACHIプロジェクトにいっしょになんか考えませんかというお誘いがありまして、いろんなことは可能なんですが、特に東北の学生のみなさんが今、今日現在のいろんな苦しみを背負ってると思いますけれども、政府も含めて世界中の人々から温かい支援や応援の声がよせられたと思います。その中でも、わたしは特に学生のみなさんに今現在の苦しみあるいはそこからなんとか脱却するということも含めてですけれども、自分たちの将来の夢に向かって明るい希望、そういうものが開くことが出来れば、それに少しでもお手伝いできるとしたらいいなと心から願っているわけです。
今回カルフォル二ア大学のバークレー校に300名の被災地のみなさんの学生、高校生のみなさんですね、300名の高校生のみなさんに今年の夏休みの代わりに3週間アメリカでの英語研修そしてリーダーシップ研修ということでお誘いすることになりました。
実はこのプログラムは私自身の体験から来ておりまして、私は16歳の時に始めてアメリカに行きました。それまで私は実は日本で生まれて、日本で育って安本正義という名前の人生でありました。日本で私の学校の友達の間では日本人の一人ということで過ごしてきたんですが、心の内底にですね実は自分は韓国籍で孫正義なんだということがずっと心の中での葛藤だったんです。
丁度私が中学の時に父親が肝臓と十二指腸を患って吐血をしてしまって、病院に入院してる真っ最中で家族はもう真っ暗な心の状態で父親がそういう状況で本当に経済的にも苦しかったですけれども、家族の中のこういう不幸が渦巻いてるときで、しかも私は精神的には自分が中学校・高校のときに国籍の問題で悩んでいるときになんとかこれを脱皮したいということで、高校1年生の夏休みのときにカルフォル二ア大学のバークレー校に3週間、4週間くらい研修に初めて外国に出かけました。その時に飛行機から降りたときの最初に見たカリフォルニアの空の高さ、空の青さそのことに感動して、見る人々がさまざまな人種ですね、白人の人もいれば黄色人種もいる黒人のひともいる、でもみんな明るくさわやかに笑いながら会話をして歩いてる。自分はなんでこんなちっぽけなことで悩んでいたんだろう。世界はみんなひとつだ。その自由でアメリカンドリームがいっぱいあるこのアメリカで何かを学んで帰りたいということでその3週間過ごしたのが私の人生の転機になりました。それから日本に帰ってきて高校をすぐに中退して退学してアメリカの高校に転入したわけです。もしそのアメリカでの体験がなかったら今日の私の人生はまったく違ったものになっていたと思います。
私はそのことのきっかけで人生が変わった。自分の夢が、希望がそこで生まれた。もちろんいろんな難しい苦しい問題もいっぱいその後体験はしましたが、でもそこに心の希望が生まれた。今回被災地の子供たちがまだまだいっぱい苦しいこともこれからあると思いますが、もし今回このプログラムで一人でも二人でも多くの人たちが、あるいはその家族も含めてですね、自分たちの子供がそして自分たちの友達が何かそういうきっかけでチャレンジしよう、世界は広いんだ、世界の空は高いんだ青いんだということを体験するそういうきっかけのお手伝いが出来るのを心から願っております。是非、みんなで応援しましょう。」