2018年TOMODACHI 障がい当事者リーダー育成米国研修の研修生が決定、ボストン市で研修を開始
障がいのある日本の若者が強さと自信を兼ね備えた次世代リーダーとして活躍することを目指し「TOMODACHI 障がい当事者リーダー育成米国研修」は実施されています。本年は下記の3名が厳正な選考手続きを経て、マサチューセッツ州ボストン市で実施される、リーダーシップとアドボカシー能力を向上させるための集中研修に参加することが決定しました。研修は2018年8月から11月までの4カ月間にわたって行われます。
渡米に先立ち、2017年度の研修生酒井春奈氏と共にノースロップ・グラマン社を訪問し、研修への意気込みを共有したほか、同社の社長スタン・クロー氏をはじめとするスタッフの皆さんと交流し、激励の言葉を頂きました。
高橋加奈(たかはし かな)
高橋氏は、福岡県出身で先天性の視覚障害があります。小学校と高校は普通校に通い、中学は視覚障害特別支援学校で学びました。高橋氏は自身の経験から、早い段階から特に学校における障がい当事者とインクルージョンについて関心を持つようになりました。このことが、福岡女学院大学で幼児教育について学びたいという気持ちにつながりました。高橋氏は2014年に大学卒業後、カナダに1年半滞在し、保育所で勤務し、障がい児のインクルージョンに関するカナダの政策と実践について学びました。カナダでの就業経験を終えた後は福岡県に戻り、現在は次のステップの仕事を探すまでイケアで働いています。カナダでの経験が、本プログラムに応募するきっかけとなりました。高橋氏は、研修を通し、国際比較や異文化比較における幼児教育や障がい当事者、インクルージョンについての知識を広げたいと期待しています。2018年研修生として、米国のインクルージョンと早期介入について学び、特に障がいのある子どもたちが自分自身のアドボカシーができるよう、その教育方法を学びたいと考えています。またボストンでの学びと経験を、教育者や障がい児の保護者、日本の障がい当事者擁護団体に共有したいと考えています。さらに自分自身のアドボカシー能力を磨き、インクルーシブ教育分野での活躍を目指します。
岡啓史(おか けいじ)
広島県出身の岡氏は、東京の国際基督教大学2年生に在籍し、ジャーナリズムと経済を学んでいます。大学の学生新聞サークルで記者としても活躍する岡氏は、ボストンでの研修期間に、批判的思考と文章能力をさらに磨きたいと考えています。大学に入学する前は、広島県の広島なぎさ高等学校に通い、学校の中で唯一障がいがある生徒として学生生活を送りました。この経験を通して、両親の励ましと支えと共に、自分自身のニーズを提言し、必要な設備を要望してきました。学生生活を振り返り、「早い年齢から障がい当事者の抱える問題について他者に伝えることを学んだ」と述べています。岡氏は視力障害者として、障がいがある学生が学校や日本の社会で現在も直面するバリアを直接経験しました。国際ジャーナリズムのキャリアに進み、メディアを通して障がい当事者に対する意識を高め、国や文化越えて、マイノリティ全般に対するネガティブなイメージや偏見をなくしたいと考えています。2018年度研修生として、米国における障がい当事者や多様性、インクルージョンについて学び、これらの問題を実用的かつ論理的に発信する方法を学びたいと考えています。また、岡氏はこの研修期間での学びや経験に関する記事を大学内外で発表しようと計画しています。
壁谷知茂(かべたに ともしげ)
壁谷氏は歯科医で、現在、大阪大学大学院歯学研究科で研究ベースの博士課程に在籍しています。2012年に医療ボランティアとして難民の人々に歯科治療を行うためにカンボジアを訪問し、滞在中の事故で脊髄を損傷しました。それ以降、車いす利用者としての新しい生活とアイデンティティに順応してきました。壁谷氏は、個人および専門レベルで、障がい当事者リーダーとしての幅広い経験があります。壁谷氏は所属機関の大学生、大学教員、スタッフを対象にした歯科医療実習の障がい当事者とユニバーサルデザインに関するワークショップにおいて、障がいがある医療専門家としてファシリテータを務めてきました。また大阪大学と地元のデータ通信企業が共同で実施した、当事者のソーシャル・インクルージョン実現に向けた携帯アプリの開発と試験のプロジェクトにも参加しました。また壁谷氏は、熱心で熟練した車いすラグビー選手でもあり、HEATという地元の車いすラグビーチームのキャプテンとトレーナーを務めています。障がい者アスリートとして、障がいに対する意識啓発とスポーツにおけるインクルージョン実現のために尽力しています。地元の小学校を頻繁に訪問し、子どもたちに障がい当事者問題や車いすラグビーの話をしています。壁谷氏は、2020年の東京パラリンピック出場を目指し、厳しいトレーニングを重ねてきました。2018年度研修生として、米国のインクルーシブスポーツについて学び、可能であれば現地の車いすラグビーチームとも関係づくりをしたいと考えています。また、米国における障がい者の社会・医療サービスのシステムや日本と米国の違いについても学びたいと考えています。
本プログラムは、ノースロップ・グラマン社の多大なる支援を受け、実施されています。