日本における将来の災害看護のあり方とは?災害発生後のメンタルヘルスの重要性について考える
10月24日、25日の2日間、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の本社にて、TOMODACHI J&J 災害看護研修プログラムの参加者8名が、災害医療の専門家と会談し、米国での学びの報告や意見交換を行いました。
仙台徳洲看護専門学校2年の星いくみ氏は「将来は看護師として、災害が起きた後の、ストレスによる関連死を少しでも減らしていきたい」と述べ、更にニューヨークで実感したメンタルヘルスの重要性を胸に、看護職に就いて多くの人を助けたいと語り、会場から大きな拍手が送られました。
第2部シンポジウムについて
本プログラム は、東北の災害医療を専攻する看護学生の能力育成と、リーダーシップの構築を図ることを目的に、日本のジョンソン・エンド・ジョンソン・グループとTOMODACHIイニシアチブのパートナーシップにより企画・運営しているプログラムです。初年度となる2015年は、宮城県より8名の看護学生が選出され、参加しています。日本での事前研修、ニューヨークとワシントンD.C.を訪問した米国研修、帰国後の報告会という三部構成で展開されています。
プログラムの締め括りとなる報告会は、仙台・東京・高知の3都市にて開催され、米国研修を振り返るとともに、今後実行可能なプランを議論しました。9月に開催した仙台報告会では、各自10分間のプレゼンテーションを通し、家族や友人、先生など日頃からお世話になっているコミュニティの方々に対し、米国研修で得た経験や想いを伝えました。東京報告会では、米国での学びの他、日本の抱える災害看護や医療における課題、あり方に焦点を当てました。また、高知報告会では、災害看護の分野で先進的な高知県立大学の看護学生との交流により、地域が直面している課題を学んだ他、宮城県と高知県の学生間で議論の場を持つ事の重要性や、今後協働する方法を模索する機会となりました。
サイコロジカル・ファースト・エイド(PFA)を通じてメンタルヘルスの将来を学び、地域コミュニティへの貢献を考える
日本におけるメンタルヘルスに対する教育の必要性を捉え、宮城県教育委員会緊急派遣スクールカウンセラーの岡田太陽氏を講師としてお招きし、災害における復元力(レジリエンス)と持続力に焦点を当てた、サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)のワークショップを実施しました。ワークショップ終了後には、一人ひとりに岡田氏より修了証が手渡されました。その中で、災害時外部の者が地域コミュニティに入る際の留意点、また効果的な方法として、「突然相手を質問攻めにするのではなく、世間話から始める必要がある。」と自身の経験を交えてお話いただきました。また、ワークショップでは、患者と看護師の1対1でペアを組み、看護師が患者の症状を読み取っていくというロールプレイを行いました。「自分の経験していない患者さんの悩みに、どこまで共感するべきなのか悩んだ」 と参加者の気仙沼市立病院附属看護専門学校2年の小野寺奈央氏が感想を述べました。
その後実施したTOMODACHIワークショップでは、米国研修を経て、自身に起こった変化、また災害にまけないコミュニティをつくる為に、どのように貢献していきたいかの2点を考え、参加者間で各自の目標を共有しました。「災害が起きていない時から、自らが皆の交差点となってコミュニティ形成に携わりたい。」と話す国立病院機構仙台医療センター附属仙台看護助産学校3年の三浦万理氏からは、その決意が伺えました。
主な学びや教訓を発表
2日目は、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社本社において、報告会としてプレゼンテーションと交流会を実施し、災害看護に関心を持つ一般参加を含む50名が出席しました。日色保代表取締役社長が登壇し、わずか半年間という短い間に大きな成長を遂げた参加学生を称えました。
東北大学新災害科学国際研究所 災害医療国際協力学分野 江川新一教授は、基調講演で「(防災を)災害というクラスターだけで議論するのではなく、健康と一緒に複合的なアプローチで対策がとられるべきである。」と日本の災害看護の課題に言及しました。
その後、江川新一教授、小松恵教員、宮城大学看護学部看護学科4年の藤沢爽風氏、石巻赤十字看護専門学校2年の宮川菜津美氏、そしてファシリテータとして菅原準一教授を迎え、パネルディスカッションが行われました。質疑応答では、継続的な災害対策を講じるには国のリーダーシップが不可欠であること、災害発生時前からコミュニティ内での繋がりを強化する重要性などが議論されました。
今後のステップ
報告会の最後には、東京での2日間を振り返り、参加学生たちが米国研修での学びを今後にどう活かしていくか話し合いました。
「米国では、正しい知識があれば看護師として十分なケアが可能だと学んだ。自分も、正しい情報を捉えれば、看護師として十分に貢献できると確信した。」と話す仙台青葉学院短期大学3年の菅原麻里菜氏の目は希望に満ちていました。