TOMODACHI J&J災害看護研修プログラム事前研修にて米国より2名の災害医療専門家が来日し講演
「東日本大震災を経験したことがきっかけで、将来災害医療関連の仕事をしたいという思いを抱き、現在看護学を学んでいます。」
「3.11を経験した一人であるからこそ、私は被災者を独自的に親身になって助けることができると思います。その目標への第一歩として、まずアメリカにおける災害医療や看護学の実態を視察したいです。」
これらは、TOMODACHI J&J災害看護研修プログラムに選ばれ、2015年8月からアメリカ合衆国に研修に行く宮城県の看護学生の声です。本プログラムはジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社とのパートナーシップにより実施され、災害医療を専門とする東北の看護師の能力育成を支援することを目的に企画されたプログラムです。
本プログラムでは東北地方の看護学生がニューヨークとワシントンD.C.を訪問し、現地での研修に参加します。第一回となる今回は宮城県から募集を行いました。研修内容では、まずニューヨークにて、9.11による人々への直接的・短期的な影響と長期的な影響(精神的健康など)について学びます。その後ワシントンD.C.にて、災害時におけるアメリカの国内外双方での対応について学びます。具体的には、国内における米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)や全米災害救援ボランティア機構(NVOAD)などの組織を通じた対応、そして国外における米国国際開発庁(USAID)や赤十字などの組織を通じた対応に注目します。参加者は全員東日本大震災の経験者であり、世界中で災害対応に関する教育が促進されるよう、アメリカでは多くの人々に自らの経験を伝えたいとの思いを抱いています。
本プログラムは三部構成になっています。第一部(事前研修)が先日終了しました。事前研修では災害医療の専門家二名が来日し、八名の看護学生に対してアメリカでの研修に先立つ準備講習を行うとともに、東京と仙台の日本人専門家と面会し専門分野についての知識共有を行いました。テナー・グットウィン・ヴィネマ博士(博士号、公衆衛生学修士、外科学修士号、正看護師、アメリカ看護アカデミーフェロー)は看護師教育の分野において30年以上の経験を持ち、FEMA、赤十字、保健福祉省などの組織への提言を行ってきました。また、ヴィネマ博士はご自身のコンサルティング会社も持ち、看護師にとって最高の栄誉であるフローレンス・ナイチンゲール記章をスイス・ジェネーブの国際赤十字赤新月社連盟より受章した経歴もあります。クリスタ・ケイトー博士(医療経営学修士、看護学士、正看護師)は集中治療や教育課程開発の分野において10年以上の看護師としての経歴を持っておられます。最新の実績としては、職務先のチルドレンズ・ナショナル・メディカルセンターとアメリカ国立衛生研究所との協同により「エボラ出血熱流行対応計画」を立案・展開したことが挙げられます。
事前研修は東京と仙台で開催されました。東京での事前研修はアメリカン・センター・ジャパンにて米国大使館主催講演会との合同で行われました。仙台での事前研修は2015年6月13日にTKP仙台カンファレンスセンターにて開催され、東日本大震災の被災地である宮城県・岩手県・福島県の学生、教師、医者および看護師が参加しました。
日色保ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニー代表取締役社長は、本プログラムの参加者と直接面会し歓迎の意を伝えるために東京から仙台を訪問しました。日色氏は社会人になってから初めて海外に出たと自身の経験を述べ、新しい言語を習得するのはいつになっても手遅れではない、「その意志さえあれば、必ず道は開ける」と力強い言葉を学生たちに送りました。
事前研修は、8月の米国研修の内容向上のために専門家二名に東北地方の災害時評価を行ってもらうことも目的としていました。そのために、二名は東北地方でも特に被害の大きかった地域に行き、現地の病院が震災時にどのような対応をしたかについて学びました。石巻赤十字病院と女川町地域医療センターの医者や看護師には東日本大震災及び大津波発生後に直面した課題、特にその中で何がまだ解決されておらず、この数年間で新たに浮上した課題は何かについて調査することができました。
本プログラムの第二部である米国研修は2015年8月に実施予定で、看護学生がニューヨークとワシントン D.C.を訪問します。
第三部では、参加者である看護学生やそのメンターが米国研修を通しての発見や学びを東北地方の看護関係者に発表します。また、本プログラムを通して災害訓練や災害に対する反応を学ぶことに興味のある全国の異なる地域を訪問し、今年度参加者が東日本大震災を経てどのような試練や機会を経験したかを話してもらいます。仙台でのイベントにて、石巻市からの参加者である宮川菜津美氏は「私は本プログラムにおいて日本を代表する立場に選ばれましたが、そこで学んだことや経験は皆さんのためのものです。重要なのは「継承すること」であり、この貴重な学びを多くの人と共有出来ることを楽しみにしています」と述べました。気仙沼市からの参加者である小野寺奈央氏は「本プログラムを通して、日本や被災地を見る新たな視点を習得し、改善のためのさらなる機会を探すことを目指したいと思います」と強い意志を示しました。
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