プログラム参加者・TOMODACHIアラムナイに聞いてみました!:長友ひろむ氏
今回は、福島県猪苗代町の議会議員である長友ひろむ氏にインタビューを実施いたしました。長友氏は、議会議員であると同時に、未活用の地域資源を活用した事業を通じ、環境保全と経済発展の両立を目指し、新たな地域産業の創出を使命とする株式会社いなびしの創業者でもいらっしゃいます。また、長友氏はTOMODACHIファミリーマートSDGsリーダーシップ・プログラムin東北のアラムナイでもあります。今回のインタビューでは、元競技スキー選手としての歩み、ブラック企業での勤務経験、そして猪苗代町議会議員としての取り組みについてお話を伺いました。
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どのTOMODACHIプログラムに参加しましたか?プログラムでの経験はどうでしたか?プログラムに参加して何を学びましたか?
応援しあう東北アカデミー(TOMODACHIファミリーマートSDGsリーダーシッププログラムin東北)に参加しました。プログラムを通じて、メンバーから様々なアイデアを頂いたり、他地域で活動されている方との交流を通じて、自身の活動がよりブラッシュアップされていったと感じました。
特に印象に残ったプログラムでの思い出はありますか?
プログラムを通じて知り合った仲間が、実際に自分が住んでいる地域に遊びにきてくれたり、その逆もあり、このような交流が私にとっての思い出です。災害があった時には、被災を受けた地域に住んでいるメンバーから連絡いただき、ボランティアにかけつけたこともありました。また、TOMODACHI GO ABROAD賞を頂いて、メディア等でも紹介いただけたことも良い思い出です。
長友さんにとってTOMODACHIとは何ですか?
右も左も分からない駆け出しの頃の自分に、素晴らしいきっかけを与えてくれた存在だと感じています。特に最後に賞を頂き、それがメディアで紹介され地域の方からも認知してもらえるきっかけにもなりました。また、その記事をきっかけに、福島県内のメディアから取材がくることもあり、駆け出したばかりの事業にとても良い追い風になったと思います。
競技スキーを始めたきっかけについて教えてください。高校と大学では、スキーに打ち込み続けていたそうですが、スポーツを通して得られた学びや成長を教えてください。
競技スキーを始めたきっかけは、子ども向けのスキー大会で入賞した成功経験から、競技に打ち込むようになりました。
競技スキーを通じて海外遠征や国内の様々なスキーリゾート地に行く機会が多かったので、世界各地や国内の観光地のことを知れたことは良い学びだったと思います。また、起業して新たな事業を進めていくと、困難の連続なので、それを乗り切るだけの根性と体力が一番身に付いたと感じます。そして、小さい頃からスキーや進学の関係で、常に様々な場所に移動して生活していたこともあり、変化に対しての抵抗感が薄く、変化の早い時代に対しての適応力は少なからず得られたのではないかと考えています。
猪苗代町の地域おこし協力隊に就任された背景や動機を教えてください。また、協力隊で得たスキルや気づきについてもお聞かせください。
大学卒業後は競技スキーを引退し、一般企業に就職しました。若干ブラックな会社で夜の10時頃まで飛び込みで一般の家に営業をかけて、警察を呼ばれそうになることもありました。また、会社の利益の為に、お客様に対して本来必要のない商品も上司の指示で営業しなければならない状態でした。これらの経験から、誰が作ったのかも分からない商品やサービスを、会社の利益の為に営業するのではなく、自身で世の中の為になる商品やサービス、新たな価値を生み出して提供することにより、社会全体に良い影響をもたらせられるような仕事をしたいと思うようになりました。そして、自分自身のモチベーションの所在もお金ではなく、別のところにあると感じました。そのことから、色々調べた結果、地域おこし協力隊という仕事をネットで見つけ、小さい頃からの思い入れもある猪苗代町で活動することになりました。協力隊員として活動する中で、民間とは違う行政の仕組や職員の考え方、地域全体の方向性や課題について、深くまで見えてくるようになりました。協力隊員時代の活動を通じて地元の方や地域事業者、周辺の自治体との繋がりも作ることができました。
「株式会社いなびし」を設立された際のきっかけについて、教えてください。また、会社を通じて実現したい目標は何ですか。
協力隊の活動を通じて、猪苗代湖の水質保全のボランティアに参加したことがきっかけでした。菱(ひし)という水草が大量に増殖し、放置しておくと枯れて水質汚濁に繋がってしまうということで、毎年船を導入して回収作業が行われていたり、浅瀬は年配の方達がボランティアで回収作業を行っており、手間も費用もかかっている状態でした。小さい頃から猪苗代湖で遊んでいたので、昔泳げていた浜が、泳げないくらい水草だらけになっていました。水質の順位も当時に比べ落ちていて、どうにかしたいという思いと同時に、菱は何かに活用できるだろう、もったいないと思うようになり、事業として活用をスタートさせました。会社を通じて実現したい目標としては、環境保全と地域経済の発展の両立です。地方の財政状況は今後更に厳しくなる可能性も高く、環境保全の活動とはいえ自走した取組にする必要があると感じます。まずは持続可能な水環境保全の取組を構築し、菱のように厄介者扱いされているようなものでも、活用し新たな地域産業と雇用を創出させることにより、環境保全と地域経済の発展、双方の調和の実現を目指しています。また、私自身が20代で移住し、経験もスキルもお金も実績も何もない状態から成功事例を作ることによって、次世代に地方の可能性を示していきたいと考えています。若者が新たな事に挑戦できる土壌づくりに繋げていきたいです。
猪苗代町の町議会議員として、地域に対して取り組んでいることや重点を置いている課題について教えてください。
現在、特に力を入れている取組は、地域の担い手の確保や町のイメージアップ、広報活動になります。最近若い方からの移住の相談や事業の相談をよく受けていますが、その中で課題に感じることは、空家は増えてきているものの、田舎はななか情報が表に出てこないので、都会にいる若い人が住む家を探しても見つけられず、猪苗代町を気に入ってもらっても他の地域に行ってしまうことが多々あります。その為、空家の情報収集やマッチングを進めています。また、最も難しい課題としては地方における職業選択肢の少なさです。近年、若者を中心に多様な働き方が広まっているので、個々にあった提案や情報提供を心掛けています。そして、起業がしやすい時代でもあるので、起業や事業承継といった選択肢も選びやすい環境作りも進めたいと考えています。
社会起業家として、苦労した点や印象に残っている経験はありますか。
経験も知識も実績もお金も何もない状態からのスタートだったので、常に試行錯誤の連続で、失敗することが当たり前の状態でした。商品開発も初体験で、例えば菱の実の乾燥作業も、最初は乾燥条件が分からず、原料の8割程をダメにした経験もあります。スモールスタートで少しづつ形にしていき、大変な事ばかりでしたが、夢中になって楽しみながら活動していました。
現在は、社会起業家 兼 町議会議員として活動されておりますが、どのように活動を両立されているのでしょうか。
私は、若者の視点・移住者としての視点、社会起業家として得てきた知見を町政に反映させられるよう常に意識して活動しています。自分の会社の方はある程度スケジュールを調整できますし、任せられるところはスタッフに任せながら、活動を両立させています。
今後の地域社会に向けて、どのようなビジョンを持って活動を続けていきたいと考えていますか。
地域にとってプラスになるかどうかを判断軸に活動を続けていきます。そして事業規模を拡大し、雇用を沢山創出できるような会社に成長させたいです。最低でも売上1億円以上は目指していきたいと考えています。事業としては、福島・猪苗代から世界へ展開していきます。商品を輸出することによって、猪苗代湖のことを知って頂き、インバウンドに繋げていきたいです。そして外貨をしっかり稼げる地域にしたいです。また、起業するなら猪苗代町だよね!と言われるような、新しいイノベーションを起こせるような土壌を作っていきたいと思います。
猪苗代町の一番好きなところは何ですか?
オールシーズン様々なコンテンツを楽しむことができ、四季折々の景色を楽しむことができるところです。
若い世代へのアドバイスやメッセージはありますか?
ただ漠然と仕事したり座学で勉強するよりも、自分で実際に事業をやってみて、痛い思いをしたり、小さくても成功体験を得ることが一番勉強になると感じています。10代・20代のうちに、どれだけ色々なことに興味を持ち、実際に体験し、インプットとアウトプットができるかで、その後の成果が大きく変わると実感しています。今の時代、無料で誰でも平等に多くの情報にアクセスできるので、色々な地域の事例や研究成果を調べて、掛け合わせていくと、面白いことができるかもしれません。私は決して他の人に比べ優秀な人間ではなく、むしろ一般的な仕事をした場合、発揮できるパフォーマンスは人並み以下かもしれません。なので、私からのメッセージとしては、あなただからこそできることや、やる意義のあることを探して、色々なことに挑戦していってほしいと思います。人それぞれのペースとリスク許容度の範囲内で挑戦していってもらえたらと思いますが、20代なんてあっという間に終わってしまうという事も頭に入れつつ、できることを今すぐやりましょう。1人1人、あなた自身が活躍できることこそ、社会貢献に繋がると信じているので、一緒に楽しみながら頑張りましょう。
このインタビューは2024年11月14日、アイカ・タラベラとクイン・カリーナによって行われました。彼女は現在、TOMODACHI アラムナイ・リーダーシップ・プログラムのインターンをしています。