TOMODACHI J&J 災害看護研修プログラム2023、米国研修を実施
2023年8月5日から18日まで、2019年以来4年ぶりとなるTOMODACHI J&J 災害看護研修プログラム2023の米国研修が実施され、10名の看護学生が、ニューヨーク市、ニュージャージー州、ワシントンD.C.を訪問しました。
研修の前半は、ニューヨークを訪問し2001年に起きた同時多発テロ跡地にある博物館で、当時何が起こっていたかを物語る記録物や遺品を実際に目で見たりすることで、人的災害の恐ろしさや被害の大きさを学びました。ニューヨーク大学メディカルセンターでは、コロナ禍でどのような対応がされていたのか、またその経験からどの様な学びがあったのかなどを、病院内の様々な部署から講師をお招きしてご講義頂きました。
ニュージャージー州へ移動後は、2012年に発生したハリケーン・サンディの被災地を視察し、当時実際に被災された方で、ご自身も看護師の資格を持ち、現在は看護学校で教育をする立場にいらっしゃるマーガレット・クイン氏から、貴重なお話を伺いました。参加学生の縄野晴香氏からの「通常支援者であるクイン氏が被災者となり、一番救われたと思った支援は何だったか?」という質問に対して、クイン氏は「子供の居場所である学校が密の濃いコミュニケーションを取ってくれたことが一番の救いだった。自分が復興のために必死になっている中、子供の変化に気付かないこともあったかもしれないが、学校が小さな変化にも気付いてくれて、その都度家族へ連絡を入れてくれたお陰で変化に対応することができた。」と回答しました。その後、協賛企業であるJohnson & Johnson本社を訪問し、「5B」というエイズが蔓延し始めた当時、看護士たちが、エイズ患者を人として看病するべきだと立ち上がり活動した当時のドキュメンタリー映画を視聴し、新型コロナウイルス蔓延時に重なる点などを話しながら意見交換を行いました。
後半は、医療用ソリ(Med Sled)を利用しての避難訓練や除染作業、実物を用いた避難用持ち出し袋(Go Bag)や止血帯の使い方講習など、実践的な訓練にも挑戦しました。また、ムラージュというシミュレーション訓練の際にマネキンや、訓練参加者に使用する怪我やあざを実際に学生が特殊メイクで作成する講義もありました。米国軍大学では、災害時を想定したトリアージでの優先順位を瞬時に判断する研修を実施しました。
米国研修最終日には、Children’s National Health Systemで行われたレセプションに出席しました。レセプションには、Children’s National Health System副会長兼COOのキャサリーン・チャバヌ・ゴーマン、在アメリカ合衆国日本大使館より相航一行使、米日カウンシル共同理事のスーザン・モリタ氏のほか、Children’s National Health Systemのスタッフ数名、ワシントンD.C.地域の米日カウンシル会員が参加しました。
スーザン・モリタ氏は、「私はあなた方が看護と言う道をキャリアとして選んだことに大変尊敬します。看護師は、医療の最前線に立つ人材であり、患者とその家族や愛する人と最も多くの時間を過ごす人であり、そのためにも、看護師に深い感謝を持っています。」と祝辞の言葉を送りました。
参加学生の熊谷茉莉氏は、「米国研修を通して、日常生活はその人や地域によって様々であるということを実際に生活することによって強く感じています。災害は日常生活の延長という言葉の通り、その日常生活を元の状態に戻すことが、看護師として被災者にできるケアの中心だと私は考えます。つまり、被災者自身の回復力を活用して自然と笑顔になれる状況を作ることが私にとっての災害看護であり、尽きない目標です。」と述べました。
10名の参加学生は、9月に兵庫で行われる事後研修に参加し、その後プログラムで得た学びから、自らのプロジェクトを実施する事で、コミュニティに還元し学びをアウトプットする事を学びます。