プログラム参加者・TOMODACHIアラムナイに聞いてみました!:レイチェル・ブルックス氏
今回は、2018年のTOMODACHI Mitsui & Co. Leadership Programに参加したレイチェル・ブルックス氏へのインタビューです。
ブルックス氏は、ロータリー平和フェローシップの奨学生として英国ブラッドフォード大学の国際関係および安全保障学科で修士候補生として学んでいます。ブルックス氏が主に研究している分野は民主主義、企業の社会的責任(CSR)、技術政策、特に偽情報への対応です。それ以前には、ダートマス大学タックスクールオブビジネスのCenter for Business, Government & Societyで社会的インパクトおよび体験学習プログラムの運営に携わっていました。ダートマス大学以前には、米国国務省のフルブライトプログラムを利用し、韓国の済州島(チェジュ島)で2年間にわたって英語を教えていました。現在、フルブライト米国学生アラムナイ大使を務めています。また、Sharpe Community Scholar and Honors の奨学生として、ウィリアム・アンド・メアリー大学を卒業し、公共政策の学位、学際的な研究で優秀な学生に与えられる賞を得ています。
このインタビューは、2020年11月17日にTOMODACHIアラムナイ ・インターン(2020)の三原黎香(東京)によって行われました。
Q1: 民主主義や平和構築、安全保障に関して熱心に取り組むようになった経緯を教えてください。
私は学部で公共政策について学びましたが、主に教育政策と社会言語学に関するものでした。教育というものは世界各国で違うと認識していましたが、そういったことを教科書で学ぶだけで、他の国々に行くチャンスはありませんでした。そんな中、卒業後に韓国の済州島で2年間、英語を教えるチャンスを掴みました。その地で、平和研究と東アジアにおける平和構築を含む国際安全保障に強く惹かれたのです。
韓国で英語を教える中で、米国について私の学生たちがどう考えているのか、また、その理由を知ったのは、大きな驚きでした。同時に、一人の人間として得た経験だけでは、自分の国全体を代表するのは難しいことだとしばしば感じました。それで帰国後、大きな社会問題の解決にあたる、異なる分野の役割についてもっと学びたいという思いにかられたのです。現在、ロータリー平和フェローシップの奨学生として、平和構築および安全保障、特に情報の自由な流れと民主主義の未来について重点的に研究しています。
Q2: 偽情報の問題に関する仕事で最も難しいこと、そして素晴らしいことはどんな面でしょうか。信頼のおける情報を見分けることに関する責任についてはどう思われますか。
難しいと思った一面は、有害で不正確な情報を故意に拡散する、たちの悪い人たちが多すぎることです。同時に、それがこの問題を非常に重要な研究分野にしている要素でもあると言えます。人々がオンラインの情報を守ろうとしている様々な努力やイノベーションを知るというのは刺激的です。難しいことと素晴らしいことは、コインの裏表みたいなものです。言論の自由がひとつの例でしょう。自由な会話や考えの共有を尊重することは、民主主義にとって非常に重要です。しかしそれらの価値は、悪意を持った間違った情報を人々が共有しやすくなる機会をも作り出します。この対人およびオンラインの世界をより安全な場とする方法について深く考えらえるというのは、非常に大きな機会でもあり大変難しいことでもあります。
私たち市民が偽情報を見分けるためにできることは何かと考えると、アドバイスはいくつか思い浮かびます。ひとつは、ソーシャルメディアで目にするものは、それが信頼できる人からのものであっても、内容に疑問を持つことです。また、私たちが自ら拡散してしまうのを防ぐためには、情報を共有する前に記事の全文を読み、内容と情報源を信頼できるか確かめることが重要です。偽情報は注目を集め、拡散されることに頼っています。ですから、どんな記事を共有するのかに注意しなくてはなりません。一般的にはデジタルプラットフォームや政府がこの問題について大きな役割を担っていると考えていますが、一方で、情報環境を見ている私たち市民が、より良い知識を得るためのデジタルやメディアリテラシーのリソースは非常にたくさんあると思います。
Q3: TOMODACHI Mitsui & Co. Leadership Programに参加して得た、最も重要な学びを教えてください。
私にとって、特に際立っているのは、東日本大震災後の復興、回復力、イノベーションです。災害復旧について多くを学びましたが、現在、私が行っている平和研究や安全保障の仕事にも、学んだことは非常に当てはまっています。宮城県石巻市の人たちが地震と津波に対応したときの話には特に心が動かされました。あの悲劇が起きた後、地域が一丸となって行った対応とイノベーションについて学びましたが、災害対応が新しい社会起業家精神や日本を再建する様々なイノベーションをもたらしたのは、本当に素晴らしいと思いました。
私は、このプログラム参加前から東日本大震災について知っていました。しかし、市町村での対応、被災地域の景色に残された痕跡、人々の生活が個人や地域レベルで受けた影響の大きさを知って強い衝撃を受けました。このプログラムでそういった日本のコミュニティーを訪問できたのは、非常によかったです。東京で数日間、イノベーションと起業家活動を中心に学び、東北地方にも行きました。そこで、行かなければ経験できなかったであろう、自分が知らない経験をしました。地震や津波からの災害復興についての考え方がはっきりと方向づけられました。大震災に対する日本の対応には、非常に心を打つ学びがあると思います。
Q4: プログラムでの経験を振り返ってみて、あなたにとってのTOMODACHIとは?
まず思い浮かぶのは、TOMODACHIプログラムで学んだお気に入りの日本語、一期一会です。一生に一度きりと考えて、この瞬間、この機会を大切にするということです。TOMODACHIでの経験を要約した言葉です。なぜなら、あの瞬間のことをこれからも大切に思い続けるでしょうし、非常に力強い経験だったからです。本当に素晴らしいプログラムに参加できて感謝しています。心から感謝していることの一つは、日本と米国の代表団が多様なバックグラウンドや業界からの集まりだったことです。それが、TOMODACHIプログラムの形成で重視されていることなのだと思います。わずか10人の米国からの仲間と日本の10人の代表の中でさえ、政府、ビジネス、非営利団体、そして様々な地域、バックグラウンドの参加者がいて非常に刺激的でした。このように意図して多様に構成されたメンバーがプログラムの質を高めていたと思います。分野を超えた私たち全員が一丸となり、米日関係を強化できることを学びました。嬉しいことに今も連絡を取り続けていますし、もっと知りたいことがある人や質問したい人がいたら、喜んで情報源になります。
Q5: 将来の目標を教えてください。その目標は米日関係という観点ではどう捉えていますか。
修士のフェローシップを終えた後も、民主主義と偽情報防止に関する活動の研究を続けたいと思っています。技術政策の分野から、どのようにして民主主義を革新し、より安全なオンライン環境を構築することができるかを考え続けていきます。また、企業の社会的責任と持続可能性についても熱意を持って当たっています。自分が強く取り組んでいこうと考えているのは、これら二つの進路です。偽情報と気候変動は、私たちの時代における二つの大きな課題だからです。
今までも、これからも、国際協力は私のキャリアを前進させるための柱だと思います。平和構築においては、紛争だけではなく、平和、これは評価するのがより難しいことでもありますが、この2つを考えることが重要です。平和には多くの違った面があります。TOMODACHIのようなソフト外交プログラムは、関係を強化するために非常に重要です。異なる国々の人々にそれぞれ未知の場所を訪れる機会や異なるバックグラウンドの人たちを理解する機会が与えられるからです。この国際協力というものに関わっていければ非常に嬉しいです。これから、情報の安全性に関わる様々なオペレーションを追求していきたいと思っています。そのキャリアを通して、TOMODACHIで得た日本での経験を生かし続けたいです。
Q6: 自分の経験を振り返って、学生や若手プロフェッショナルにとって重要なことは何だと考えますか。
自分を本当に突き動かすものを見つけるというのが私の答えです。様々な仕事を試し、どれが自分に合うのか、何に情熱を持てるのかということを考える機会を持てたことに感謝しています。韓国で英語の先生をしていたことから現在のロータリー平和フェローシップまでを通じて、私は自分が情熱を傾けられる点について考えることができました。偽情報や民主主義の課題以外に情熱を傾ける人もいるでしょう。これは非常に重要なことだと思います。私たちが直面している問題は多いですから。自分の関心のあることに挑戦し、路線変更を恐れないことが大切です。TOMODACHIプログラムのグループの中でさえ、人事から自動運転車の安全性まで、幅広い分野に情熱をもった人たちがいました。そして、その情熱が彼らのキャリアを突き動かしていました。それぞれの分野に人が必要なのです。自分の気持ちを高めてくれるものや、繰り返し問題だと思っていることに気付きましょう。その問題を取り上げて、解決方法を考え続けるのです。自分が不満だと思っている難しい問題を見つけて、その問題を解決するために何ができるか考えてください。