学生起業家、東北地方に職をもたらすべくビジネスプランを現実化
「学生起業家」 東北に職を 愛院大経営学部の5人
|
■8月にも事業開始 「被災者の自立助けたい」
愛知学院大経営学部(愛知県日進市)の学生5人が、東日本大震災の復興に役立つ事業を起こすため、走り回っている。県内の企業に協力を求め、早ければ8月にも事業を始める。経営学部2年の野崎瞳(あきら)さん(21)は「仕事をつくり、被災者に携わってもらうことで、心の隙間を少しでも埋めることができれば」と話している。
■内職あっせん 塩害の土でレンガ製造
計画を進めているのは、経営学部の鵜飼宏成教授(46)のゼミで起業を学ぶ野崎さん、高羽剛史さん(20)、岩本梓さん(20)、堀耕太郎さん(20)、山田芽生(めい)さん(20)。5人が考えたのは、仮設住宅が多い宮城県の北部で住民に内職をしてもらい、南部では塩害にあった土を使ってレンガを製造してもらうという案だ。
昨年9月にゼミ活動の一環として「被災地でできる事業を考えることで復興に貢献したい」と計画づくりに着手。被災地にボランティアに出かけた大学の職員や学生計10人への聞き取りや新聞報道から、職がないため借金の返済に追われる仮設住宅の住人が少なくないことを知った。
5人は「仕事があって経済的にも助かれば、心が満たされるのでは」と考え、被災者たちが集まって助け合いながらできる内職を思いついた。レンガはかつて、土に塩を混ぜて製造されていたことがヒントになった。
事業計画では、民間企業の協力を得て、被災地向けに内職をあっせんしてもらったり、レンガの製造場を建設してもらう。既に内職業者「内職市場」(愛知県春日井市)とは500人分以上の仕事を紹介してもらえるところまで話は進んでいる。レンガ業者「瀬戸ブリック」(同県瀬戸市)とは将来、工場が設置された場合に全面的に協力してもらうことになった。
実現までの課題が比較的少ない内職から事業を始める。仮設住宅の被災者が集会場のような場所に集まり、粗品や試供品として配る商品づくりに携わる想定で、今後、宮城県側の窓口との折衝に当たる。
内職の給料は一般的に1日1000円、月3万円程度とされる。将来、レンガ事業が実現すれば、もうけの一部を内職事業に充てていく。
5人は昨年11月、全国の学生を対象に被災地の復興や再生を主題にしたビジネスプラン競技会(米国大使館、慶応大SFC研究所など主催)に応募。今年2月、3件の最高賞の1つ、地域貢献賞を受賞した。
学生たちは現在、愛知県内の企業を回って事業への協力者をさらに募っている。鵜飼教授は「学生が卒業するまでに事業を軌道に乗せたい」と話している。
(2012年3月23日 中日新聞夕刊13面より)
[2012.03.23]