TOMODACHI Generation: ジョナサン・アボット
ジョナサン・アボット氏はTOMODACHI新生リーダープログラム2014の一員です。彼は、米国のカリフォルニア州で生まれ育ち、母は日系アメリカ人そして父は東ヨーロッパ系のアメリカ人です。アートを通して子供たちの創造性や想像力、国際交流を育んでいくために、KidArt International という非営利団体を設立しました。
身長160㎝、薄い縁のメガネをかけており、一見穏やかですが、インタビューを通して初めて、彼がユーモア溢れる人であることが分かります。声のトーンや顔の表情からは読み取ることは出来ず、彼のユーモアセンスは、長い会話をして初めて分かるものなのですで。この若きTOMODACHI新生リーダーが日本の生徒に教室で学びの楽しさ教える非営利団体を立ちあげたことに驚きはありません。
彼の非営利団体であるKidArt International で、生徒たちは様々なアート、例えば音楽演奏や、海外の食材を使った調理など、を通して自己表現の新しい方法を探求します。KidArt Internationalは子供の創造力を培ったり、新しいことに挑戦することを助長します。ジョナサンは、子供たちは楽しい時間を過ごしているときの方がよく学ぶ、と語ります。彼はアメリカからプロの芸術家を日本に呼び、アートを通して子供たちの創造性や想像力、国際交流を育んでいます。
KidArt Internationalを始める以前、ジョナサンは日本の公立学校で教えていました。彼は日本の教育委員会が指定する教材を使いながら、教室内で子供たちの活発性や創造性を高めるための様々な方法を試しました。高校生に何か楽しめる学校行事を考えるように指示をすると、ほとんどの学生がバーベキューを企画したいと答えたそうです。4つの教室で98%の生徒が全く同じ回答をしたことに対し、彼はそれを深刻な問題として捉えました。彼は、若者こそが何か楽しいことを考えられるのであると感じ、生徒をより創造的にする策を考えるようになりました。
アメリカ合衆国カリフォルニア州で生まれ育ったジョナサンは、多文化家族の出身です。日系アメリカ人である母の容姿を受け継ぎ、彼のアングロサクソン系の名前は東ヨーロッパ系アメリカ人である父の由来です。彼の母方の家族は1800年代後半ハワイに移住し、20世紀前半にカリフォルニアに移住しました。彼の家族は日系アメリカ人及び日本人としての複雑な歴史を持っています。彼の母方サイドは、第二次世界大戦中、日米間の衝突に巻き込まれることとなりました。
戦前に日本に戻った母と母の叔父は、英語を話すことが出来たため、アメリカ人捕虜の裁判で日本の軍法会議を翻訳するために徴集されました。戦後、彼らは日本の軍隊に仕えていたことで、アメリカ政府からは反逆者であると宣告されました。彼の祖母の家族は、一時期ワイオミング州ハートマウンテンに強制収容されていましたが、現在はカリフォルニアに住んでいます。ハートマウンテンに居たとき、彼の母は5、6の歳で10歳の時にその場を後にしました。
ジョナサンは、日系アメリカ人であるというパーソナリティを意識させない、かといって強調させるわけでもない家庭環境に生まれ育ちました。彼の両親は、彼と彼の双子の弟に日本語のクラスをとることを強制はしませんでしたが、彼らはお雑煮などの日本食を食べていました。彼は、長い年月をかけて日本が発展したことに感謝の念を抱いています。元々彼は、彼の祖母と日本にいる祖母の親戚とより親しくなりたいと思っていました。しかし、彼は彼自身が日本に移住し、日本で働きたいと思い始めたのです。そして2009年彼はカリフォルニアから日本に移住することを決めました。
当初、ビザを取得するのに苦労し、それは彼の日本での職業選択肢を狭めることになりました。しかし、他の側面が彼の雇用可能性を引き上げました。企業は”ジョナサン・アボット”という名を聞いて、面接では”白人”に会うことを期待します。しかしいざ面接に向かうと落とされることがよくあり、その状況には段々慣れていきました。最終的に、彼は彼の語学力を活かせるフルタイムの、柔軟性がある会社に就職することを決めました。
2014年、ジョナサンはTOMODACHI新生リーダープログラムに参加しました。このプログラムは、米日カウンシルがアニュアルカンファレンスに参加する日系アメリカ人の若い社会人を全米から選んだことが起点となっています。彼らはアニュアルカンファレンスに参加すると同時に新生リーダーとなりました。2013年には、TOMODACHI新生リーダープログラムと改名され、現在では50名以上のアラムナイとなっています。
KidArt Internationalを立ち上げたきっかけを彼は以下のように話しています。「日本の学校で先生をやっていた外国人の友人と共に、英語教育について考えた時、多くの友人が、本来は教科書から学べないことや実際の英会話を教えるべきだと感じながら、教育方針上、文法しか教えることができないと述べていました。しかし、自分はその様に教えることは良い考えではない、日本の教育システムが持つ素晴らしいリソースを最大限活かせていない、と感じました。」
彼はひと呼吸おき、そして思慮深く付け加えました。「アニュアルカンファレンスで、人々は日本がいかに国際的であるかについて述べていました。日本には世界各国から多くの人が集まる、と。私もそれは本当だと思います。しかし、大半の人は多様性を理解していないと思うことがあります。KidArt International のイベントに参加した多くの学生は彼らと異なるバックグラウンドを持つ新しい人に出会うことを恐れていました。その人のことを苦手であると思う気持ちは、その人と実際に話して初めて払拭されるのです。日本人が他の国出身の人と交流することを阻んでいるというわけではありません。
ジョナサンは日本に生涯住むとは考えてはいませんが、可能性を完全に断っているわけではありません。「私は、日本の若い世代が異なる文化を持つ人にもっと沢山出会い、交流する機会を得てほしいと思います。また、訪日外国人に日本を見せる機会を沢山与えてあげてほしいとも思います。」とジョナサンは述べました。
ジョナサン・アボット氏の活動に関する詳しい情報はこちらから:
www.kidartinternational.org