プログラム参加者・TOMODACHIアラムナイに聞いてみました!:ミッカ・ケイ・マクドナルド氏
今回は、2017年の第4回TOMODACHI大和ハウス学生リーダーシップ会議に参加したミッカ・ケイ・マクドナルド氏へのインタビューです。
ミッカ・ケイ・マクドナルド氏は、ワシントンD.C.を拠点とする非営利団体Community Changeのクリエイティブ・ディレクターとして、低所得者、特に有色人種の人々の力と能力を高め、彼らの生活に影響を与える政策や制度を変えるための活動を行っています。また、先進的な社会運動に情熱を注ぐ傍ら、ライター、デザイナー、イラストレーター、そして熱心なウルトラマラソンのランナーでもあります。彼女の執筆作品はワシントン・ポストやVox、Variety、タイム誌など数々の出版物に掲載されたほか、ポリティコやウォールストリート・ジャーナルなどでも引用されました。また、個人としての文章はThe Daily Beast、ChangeWire、DCist、WAMU、Amy Poehler’s Smart Girls、The Aspen Instituteなどにも掲載されています。
5月は、アジア・太平洋諸島系米国人文化遺産月間であることから、このテーマに積極的に取り組み、米国だけでなく、国境を越えてポジティブな変化を起こすために活動している同氏にインタビューを行いました。彼女は、アジア系アメリカ人への差別反対に関する多くの投稿をソーシャルメディア上で行っています。
このインタビューは、2021年5月9日にTOMODACHIアラムナイ・インターン(2021)の鈴木真宝(東京)によってオンラインで行われました。
Q1: TOMODACHI 大和ハウス学生リーダーシップ会議に参加した動機は何ですか?
プログラムに参加したのは、もっとアカデミックでプロフェッショナルになりたいと思ったからです。私は最近、第二次世界大戦中の日系アメリカ人の強制収容とその当時の人々の経験についての論文をPrinceton Journal for Asian American Studiesに発表しました。それを機に、私自身の日米関係への関心や、歴史と日系アメリカ人の軌跡への関心をどのようにしたら自分のキャリアに活かすことができるか考えるようになりました。
TOMODACHIは、これらのテーマを日常生活に取り入れる方法について学ぶことができる、とても素晴らしい機会だと思いました。様々な形で重なり合う日米関係について、理解を深めたいと思いました。
Q2: TOMODACHIプログラムでの経験は、あなたの興味やキャリアに影響を与えましたか?
もちろんです。TOMODACHIプログラムは大学以外の場所で行われたもので、日系人であることの意味や、それが日本という国との個人的な関係にどのような影響を与えるのかを探る数少ない機会でした。外交官でなくても、あるいは海外で仕事をしていなくても、日米関係に貢献できる方法がたくさんあることに気付かされました。日米関係をさらに強化する方法について、より多くの知識を得ることができました。
Q3: あなたが熱心に取り組んでいるプロジェクトの一つに、日系人収容所と、第二次世界大戦における政策と当時の人々の経験との交わりを探求するものがあります。プロジェクトの内容について詳しく教えてください。
私は現在、米国の政治に携わっています。主に、アジア系アメリカ人や米国内の有色人種の方をサポートする政策を主張する仕事をしています。歴史から学ぶべきことはたくさんあると私は考えています。両親や祖父母の苦しい体験を聞くのは辛いものですが、彼らから日系アメリカ人の歴史を理解することが、私にとっての過去から学ぶべき事です。実際に起こったことを正しく認識する時間を作ることが、将来、二度と同じようなことが起こらないようにするために重要なことだと考えています。過去の過ちは繰り返すべきではありません。
私は日々の生活の中で、歴史を繰り返さないために私が出来ることを実行するように心がけています。このプロジェクトもその一環です。そして、私は、その学びを自分のキャリアの一部として生かしています。学校で学んだこと、学校のプロジェクトで学んだこと、TOMODACHIで学んだことを、現代の米国政治のために実践に移してきました。
Q4: COVID-19の感染拡大によるアジア人への差別が問題になっています。このような差別をなくすにはどうしたらよいと思いますか?
自分とは違う考えや価値観を持つ人たちと関係を築き続けることが差別をなくす上で重要なのではないでしょうか。なぜなら、他人の持つ複雑さを理解したり自身の視野を広げることは、異なる考えや価値観を持つ人との共通点を見つけることなしには難しいことだと思うからです。ありのままでいること、自身の背景を他者と共有することに加えて、自分が何者であるか、どこから来たのかを適切に示し、正直であり続けることが大切だと思っています。なぜなら、差別をする人は残酷で、自身と他者にどのくらい共通点があるかに気づいていないからです。私は日系アメリカ人であるだけではなく、娘であり、妹や姉であり、友人であり、パートナーであるというように、様々なつながりを持つかけがえのない存在であると考えています。だからこそ、自分自身に思いやりを持って接することが大事だと考えています。このように自分を大切にする方法を、私は今模索している最中です。
Q5: 今後、日米関係にどのように関わっていきたいですか?
このような機会に関わり、今後も積極的に、日本人や日系アメリカ人で政治に関わっている人たちとの関係を築いていきたいです。そして、自分自身の文化的な背景をよりよく理解し、日系人収容所の歴史と現在との関連性を広めていきたいと思っています。
TOMODACHI世代サミット2018にアラムナイ・スピーカーとして登壇した同氏
Q6: あなたにとって「TOMODACHI」とは何ですか?
私にとって「TOMODACHI」とは、すでに理解していると思っている関係性について学ぶ意欲です。日系アメリカ人である私は、日本とアメリカの関係がどのようなものか知っているつもりでしたが、TOMODACHIのプログラムに参加し、日米関係には様々な側面がある事を学びました。日米関係とは、単に交流プログラムのために学生を日本や米国に派遣することや、経済関係、観光や文化・芸術の交流にとどまらない、多くの要素を持つ広域に渡る関係性であることを、私自身も理解し始めたばかりです。また、TOMODACHIのおかげで、日本の伝統にもっと触れることができました。私はアメリカに住んでいますし、祖父母は収容所を出た後、アメリカ社会に溶け込もうとしていたので、日本とのつながりはあまりありませんでした。そんな私にとって、コミュニティの一員として歓迎してもらえることは本当に素晴らしいことでした。
Q7: 今後の抱負をお聞かせください。
日系アメリカ人のアイデンティティに影響を与え、理解するための新しい方法を考え、学び、書き続けたいと思っています。パンデミックの終息後は、米国内の日系コミュニティのメンバーと集まって、そのアイデンティティが何を意味するのかを話し合うことができたら良いと考えています。もっと自由に海外にも足が延ばせるようになる日が待ち遠しいです。私は米国の政治、特に国内政治に関わる仕事をしており、私たちが国内でどのように統治しているかということと、外交関係をどのように扱っているかということには、実は多くの重なりがあると思います。ですから、その二つを近づけるお手伝いができればと思っています。
Q8: 次の世代へのアドバイスをお願いします。
私の執筆作品の多くは、過去を振り返り、アメリカにおける第二次世界大戦や日系人収容所など、私個人に影響を与えた事実をよりよく理解しようとするものだと思います。次世代へのアドバイスとしては、歴史を風化させず、新しい声を上げ続け、最大限の共感と思いやりを持つことです。特に文化が違うと、共通点があまりないように感じることがありますが、実際には相違点よりも共通点の方が多くあります。思いやりを持った方法で関係性を築くことで、視野が広がり、あなたの世界観に信じられないくらいポジティブな影響が与えられるのです。